お嬢様、家出しちゃいます!
トントン
「入りなさい」
もう真夜中だというのに、浩太郎は起きていた。
というのも、以前まで家に仕事を持ち込まない主義だった浩太郎だが、
最近は忙しすぎて定時に帰れないことを理由に、残った仕事を家でするようになったのだ。
「お仕事中、申し訳ございません。リリアお嬢様のことで、少々問題が発生しまして・・」
自分の愛娘の名前が聞こえたとたん、社長の顔から父親の顔に変わった。
鷹のように鋭い目、すっと伸びた鼻筋、そして無駄な肉のないシャープなアゴライン。
闇夜に似た漆黒の髪はワックスで綺麗に整えられている。
「問題?まさか、僕の可愛い天使ちゃんがその可愛さ故にいじめに合ってるとか?!」
仕事では、バリバリ経営者の浩太郎だが、家ではデレデレパパなのだ。
おそらく、社員が見たら、信じられないことだろう。
「いえ、お嬢様はご学友の方と毎日仲良く過ごされておりますよ?」
このギャップにもう慣れっこの如月は、顔色一つ変えずに答えた。
「それは良かった。で、問題とは?」
「私からは申し上げづらいことですので、ご本人をお連れしました」
そう言うと、如月の後ろからリリアがひょこっと顔を出した。