甘い毒
別れ際のキス。
ただの挨拶で、サービス。
その程度の意味しかもたない、それ。
「じゃ、またな!」
「うん!またねっ!」
俺の言葉に、甘い声で返してくる目の前の女。
女らしい声で、にっこり笑って、小さく手を振って、帰ってく。
ひらひらと舞う蝶の様に、可愛らしく。
きらきらと鱗紛を残して。
あいつとは何一つ違う。
「…下手とか言われた事ねーし。」
リサも、マリナも、マキも、ジュンも、ケイコも…
みんな言ってなかった。
「‥‥」
ふと、見上げた夜空に、淡く光る月。瞬く星の光がムカつくぐらい綺麗に見えた。
「…何が羽化だっつーの。」
何だよ、お前…
可愛くねぇ。
嘘。
…お前だって、蝶だったよ。
確かに、俺の心に鱗紛を残して消えた。