甘い毒

別れ際のキス。

ただの挨拶で、サービス。

その程度の意味しかもたない、それ。


「じゃ、またな!」

「うん!またねっ!」


俺の言葉に、甘い声で返してくる目の前の女。

女らしい声で、にっこり笑って、小さく手を振って、帰ってく。

ひらひらと舞う蝶の様に、可愛らしく。

きらきらと鱗紛を残して。


あいつとは何一つ違う。


「…下手とか言われた事ねーし。」


リサも、マリナも、マキも、ジュンも、ケイコも…

みんな言ってなかった。


「‥‥」


ふと、見上げた夜空に、淡く光る月。瞬く星の光がムカつくぐらい綺麗に見えた。


「…何が羽化だっつーの。」


何だよ、お前…

可愛くねぇ。



嘘。

…お前だって、蝶だったよ。


確かに、俺の心に鱗紛を残して消えた。
< 11 / 22 >

この作品をシェア

pagetop