甘い毒
目の前にいるお前が、自信に満ちた顔して俺を指差している。


「キャ、ベツ…ってお前、ふざけてる?」

「あはは。」


ふざけてるのかって溜息を吐いた俺に、顔面をぐしゃぐしゃにして笑うお前。


「…ふざけてないよ。」


すぐに真剣な表情になって、そう呟いた。

小さな声だったけど、とても強い音だった。



「キャベツにはね、他にも沢山青虫がついてるの。」


お前は黙り込んだ俺に軽く笑って、話している内容と似合わない、ゆっくりとした優しい声で話してく。


「蛾になったら、もう愛してはくれないでしょ?でも、綺麗な蝶になったら、惜しいことしたって後悔してね?」


強い意志を秘めた眼差しが、俺を貫いた。


「さよなら。」


お前は、いつもは言わない言葉を、いつもとは違う顔して言った。
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