君桜
カギを開け、家の中に入る。
「葉奈。葉奈?」
呼びか掛けても返事をしない。
返事をしないのはきっと苦しいから。
「…大丈夫か、葉奈…」
お前、俺が今どんな気持ちで背負っているか知らないだろ。
「が……く、さ………」
…葉奈?
葉奈が俺の名前を呼んだ。
小さく、消え入りそうな声で。
消えてしまいそうで、離したくない。
葉奈をとりあえずソファに寝かせる。
葉奈の部屋には一応、シングルのベッドがあるけど、俺の部屋で寝かせている。
目を離したすきにどこかに行ってしまいそうで、それが怖くて。
女々しいな、俺。
あれ?こんなキャラだったっけ?
「体温計、体温計…」
どこやったっけ。
そもそも、俺の家にあったっけ。
「……あった」
救急箱の下のほうに埋もれてた。
「葉奈、起きれるか?」
「…ん……っ」
頭を押さえて起き上がる葉奈。
頭が痛いのか。