君桜
「…い、た…」
微かに漏らした言葉。
だいぶ高いぞ…。
体温計を葉奈の脇に挟む。
服の隙間から見える葉奈の身体。
…ヤベ。
意外と幼い顔してんのに、いい身体してんじゃん…。
みなきゃよかった…。
――ピピッ…
機械音が鳴る。
「…39度7分…」
やっぱ、すげぇ高ぇなぁ…。
…心配だ。
病院連れて行こう。
「葉奈、病院、行こう…」
触っただけでも熱いのが分かる。
葉奈、いつもみたいに笑ってほしい。
あの、愛しい笑顔を、見せてほしい。
車のキーを持って毛布を持ち葉奈のもとへ再び行く。
「どこ…行くの…?」
不安を含んだ瞳が俺に向けられる。
俺の服の裾をきゅっと握り、思いっきり瞳を潤ませて。
きっと、置いて行かれると思ったんだと思う。
それが不安になって。