君桜
「どうだ?だいぶ、楽になっただろ?」
「……うん……」
やっと出てきた声は掠れていて、
何故だか学さんが顔をゆがめたのが見えた。
「…学さん?」
「あ、ああ。その点滴3本目なんだ。それが終わったら帰れるってよ。薬はもう貰った」
手際がイイね、学さんは。
学さんはまた、何かを考え込んでいるようで…。
ああ、そうか。
分かってしまった。
学さん、聞かれたんだね?
病院の人に、聞かれたんだね?
…だから、病院には行きたくないって言ったはずなのに…
ねぇ、学さん。
小さい時からね?
病院に行くたびに、聞かれ続けたの。
「その傷は、どうしたのかな?」
言われるたびに、アイツが。
「コイツは俺に似ておっちょこちょいだから、よく転ぶんですよ」って笑って答えていてね。
でも、あたし、目で訴えていたんだよ。
病院の先生に、目で。
何回も、何回も、
「助けて」
って。