君桜




でもさ、普通ね?


背中にある、煙草を押し付けられた火傷を見たら、誰だって気づいてくれるでしょう?


…誰も助けてくれなかった。


いつからだっけ。


そう聞かれるのが怖くなって。


病院に行くのを頑なに断わり始めたのは。


みんな、あたしのこと、ただの病院嫌いだって思ってるだろうね。


まぁ、病院嫌いは本当だけど。


「…あ」


点滴、終わったみたい。


「…学さん」


点滴、終わったよ、って言おうと思ったのに。


学さん、どこ行っちゃったの?


さっきまであたしの隣に立っていた学さんがいつの間にか消えていた。


仕方ないから、ナースコールを押した。


数秒してから看護師さんが一人入ってきて、あたしの点滴を取った。


「あ、ありがとうございます…」


少し出しにくい声でお礼を言った。


だけど…、


「勘違いしないでよね。学さんが居なかったらあんたにタダで点滴なんかさせないんだから」


ギロッと睨まれる。


…ああ、そうですか。


こっちは素直に礼、言ってるだろーが。


何だよ。


ちょっと顔が綺麗だからって。



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