君桜



…待てよ?


この人、学さんのこと―――――


「ねぇ、あんたと学さん、どういう関係?」


……やっぱりね。


「ナースコール、学さんが押したかと思ったらアンタしかいないし。マジで気合入れてきたのにさぁ。できればあたし、学さんの女になりたいわけ」


「…」


何でこの人、あたしにこんなことしゃべってんの?


「あのね、学さんって昔、あたしの友達と付き合ってたんだよ。でも、あたしが学さんのこと好きになっちゃってさぁ。やっと偶然病院で会えたっつーのに、何?あんたが居んじゃん?訳わかんないよ」


「…キャ…」


腕をぐっと掴まれた。


痛いなァ、もう!


こういうときに限って声が出ないんだから。


自分が、嫌になる。


「…ごめんなさい…」


「ごめんで済まさないでよ。あたしの片想いはどうなるの?」


グッと更に力を入れる。


痛い。


ホントに、痛い。


頭はまだ、グワングワンと揺れている気がして、視界がはっきりしない。


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