君桜



吐き気がする…


さっきよりも、気持ち悪い…。


「……離して……」


掠れた声で、看護師に言う。


お願い。


学さんが帰ってくる前に、あなたもここから去ったほうがいい。


お願いだから、去って。


「あなた、高校生よね?」


「…」


恐る恐る首を縦に振る。


「ガキが粋がってんじゃないわよ!!何であんたみたいなガキにあたしの片想いを奪われなきゃいけないの!?」


ヒステリック気味に叫んだ看護師の甲高い声が、病室に反響して遅れて耳に入ってくる。


その声が、吐き気を誘う。


頭の奥で響く。


その声がまた頭の中でこだまする。


「……か、帰れますよね」


もう、これ以上この人としゃべっていると本気でぶっ倒れそうで、嫌だから。


とりあえず、話題を変えた。


…のに。


「いい加減にしてよ!」


…お前がいい加減にしろよ!!


あんたの声、気持ち悪い。


胸の奥で吐き気を誘うんだってば…。


学さんが帰ってきたら、


帰ってきたら…、



こんなところ、見られたくない…。




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