君桜
✿Help
――あれはいつごろの事だっただろうか。
あたしはいつも通り、小学校へ出かける。
ケーキ屋さんの前を通って。
夏なのに長袖を着ているあたしに、同級生は好奇の目を向ける。
それが嫌で嫌で仕方がなかった。
家には居場所がない。
学校にも居場所はない。
あたしの居場所は、この街には、ない。
そんなことを実感していた、小学生の時期。
――キーンコーンカーンコーン…
放課後を告げるチャイム。
それを聞くと、同級生はみんなはしゃいで教室を出ていく。
あたしはそれが憂鬱でしかたがなかった。
放課後のチャイムは、地獄の始まり。
ケーキ屋の前を通って家路につく。
足取りは、重い。
ああ、暑い。
確か今日はこの夏一番の暑さだってテレビで言ってた。
だから、みんなあたしをあんな目で見てたのか。
「…ハァ」
口から漏れるため息。
それがどれだけ残酷なのかをあたしは知ってる。