君桜
✿Know
――PLL…PLL…
《はい。こちら110番。事故ですか?事件ですか?》
「おか、さん…がっ!お母さんが!!」
《落ち着いて。お名前は?住所は言えるかな?》
「桜木…。桜木、葉奈…!住所は―――――」
《分かったわ。もうすぐそちらに警察が行きますからね。家の外に出て待っててくれるかな?》
「きゅ、救急車!救急車も…っ!!」
《…分かった。待っててくださいね》
――ファンファンファン…
ピカピカと赤いランプを鳴らして、こっちに向かってくる…、パトカー。
電話口で言われたとおり、家の外で待っていた。
とても立てる状態ではなく、座り込んで…だけど。
お父さんは未だにあの場から動いていない。
動けないんだと思う。
だって、だって―――――――――――――――………
…あれ?
どうして…どうして?
どうして、パトカーしか、来ないの?
「君が通報者の桜木葉奈ちゃんだね?」
グレーのスーツを着た20代後半の男の人があたしの前に立って顔を覗きこむ。
「……(あ、の…)……」