君桜
――あれ?
声、が…
声が、出ない……………。
「大丈夫かい?あのお姉さんが付いててくれるからね?」
その人が指を指した先には、女の人が立っていて、警察の人がつけるワッペンが袖についていた。
「こんばんは。松宮 美佐子です」
その人はあたしを見てにっこりと笑う。
「…(…あの!)」
やっぱり、声が出ない…。
「葉奈ちゃん?」
あたしの異常に気付いたのか、あたしの身体に触れる。
「涼しい所に行こうか?」
松宮さんに手を引かれ、車に乗せられる。
窓から外の様子をじいっと見ていると、男の人や、作業着みたいなのを着た人たちが何かを持って家の中に入っていく。
そして、数時間後―――――――――――――……
「唯子!唯子ォォォォオオオオオオオ!!」
お父さん…
2人がかりで何かを乗せた担架が中から出てきて、お父さんがそれに向かってお母さんの名前を叫んで――――――――――――――……
お母さん?
あたしは急に車のドアを開けた。
「葉奈ちゃん!?」
松宮さんの声が後ろから追いかけてきたけど、それどころじゃなかった。
お父さんの近くによる。