君桜
結局、その日葉奈は寝たまま起きなかった。
そして、次の日。
俺はなんだか心配でそんなに眠れなくて、浅い眠りを繰り返していた。
そんなこんなで、朝の6時半。
葉奈の寝顔を見ていると、何故だか心がとても満たされる。
寝返りを打って俺から離れていく葉奈をそのたびに引き寄せる。
「…ん~………」
熱は昨日よりはだいぶ下がっている気がする。
夜中に念のため計ってみたいけど、あまり下がっていなかったからな。
額に手を当てると、葉奈が眉間にしわを寄せた。
大丈夫だな。
「……学さん……?」
「よお。起きたか?」
「…うん…。学さんも起きてたの?」
まぁ、起きたっつーか起きてたっつーか。
まだはっきりと開いていない葉奈の瞳が俺を見る。
「葉奈、どうした?」
うかない顔をしている。
「…え、いや…」
…。
「葉奈」
名前を呼ぶ。
葉奈の瞳が大きくなる。
「…聞いてんだよ。言え」
命令する。
居心地の悪い表情をした葉奈は、
「トイレ行ってくる」
俺から逃げようとした。