君桜
「バーカ。逃げんじゃねーよ」
手を握ってそれを阻止。
「…別にどうしたとかそういうわけじゃ…」
しどろもどろだな。
「…どうした?」
さっきとは違う、優しく言ってみる。
「…む」
お、拗ねた。
頬をプクーっと膨らまして拗ねる。
てか、それ。
可愛いんですけど。
再び葉奈を俺のとなりに寝かして、葉奈の頬をツンツンと突っついて遊んでみる。
「…も!やめてー!」
怒られた。
「じゃあ、話して」
「…んむ」
観念したのか。葉奈は大人しくなって、俺の瞳を見る。
困ったようなそんな表情で。
「…夢、見た気がした」
「…夢?」
夢って…?
「久しぶりに、見た。ちょっとだけ怖かったから…」
遠慮気味にそういった葉奈。
いつもになく、小さく見えて消えてしまいそうな気がした。