君桜


「それって―――――――」


「学さん!起きよう?」


それ以上聞いてほしくないように、


それ以上踏み込んでほしくはないように、


葉奈はベッドから出た。


…俺はまだ、葉奈の心に完全に入ってはいけなかったんだ。







時間は過ぎて8時。


そろそろ腹がすいてきた。


…と、言っても。


今まで独り暮らしだった俺は料理ができるわけもなく…。


そんなとき思い浮かぶのは、優の顔。


ああ、あのカフェな――――……。


ただで食わしてくれるからいいけど、でもなぁ。


葉奈が病み上がり…って言うか熱が下がっていれば行くんだけど。


そういうわけにもいかないし。


「葉奈、何か食う?」


ソファにちょこんと座って、クッションを抱えてテレビをじっと見ている葉奈に話しかける。


また、小さくなってる。


つい、笑ってしまった。


葉奈の瞳が俺を捉える。


「…いらない」


少しだけ笑ってまたテレビを見始める。


…いらないって…。


嫌、それはダメだろ。


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