君桜
「ね?学ぅ~」
…ったく。何なんだよ。
「ここら辺に住んでるの?」
「…さぁ」
「もしかしてお父さんの経営するマンション?」
「…さぁ」
「ちゃんと答えてよー!」
ハハハッと笑って肩を叩く。
茜に勢い余って連れてこられたカフェ。
優の店とは違ってうるさくて、居心地悪いし、最悪だ。
「…遊びに行ってもいい?今から、連れてって?」
妙にねっとりとした声で、テーブルに両肘を載せ手に顔を載せて上目使いで俺を見てくる。
「…悪いけど、待たせてる奴いるから」
早く帰りたくて仕方がないんだよ、俺は!察してくれよ!
そんなとき、携帯が鳴る。
ディスプレイには【葉奈】。
…葉奈?
葉奈から電話なんて珍しい…。
何かあったのか?
心臓が変な音を立てる。
慌ててそれでも茜に気付かれぬよう、ある程度冷静を保って電話に出る。
「…はい」
《………》
「…葉奈?」