君桜
茜が葉奈の名前を出した途端、ハッとこっちを鋭い目つきで見る。
…ヤベ。
《…学、さん?》
「どうした?」
なんだ?
何があった?
《…えっと…》
「―――学!」
カシャンっと音を立てて茜が立ち上がる。
「…うるさい」
それだけ言って意識は耳に集中させた。
「…どうした?何かあった?」
なるべく優しく。
《…あ、えっと…。ううん。なんでもない。ごめんなさい――》
プツっと電話が切れる。
胸騒ぎがする。
俺はカフェを出た。
「学!!」
鋭い声が飛んでくるけど…、
そんなの気にしてられない。
今は、―――葉奈だ。