君桜
「あなたもしかして―――桜木 葉奈?」
……ッ!!
突如震える身体。
ダメだ…この人と関わってはいけない。
この人は、知っている。
あたしの過去を、知っている。
本能的にそう感じて、身体は正直に拒絶反応を起こす。
「ふ~ん……」
ニヤリ。綺麗な唇に弧を描いて綺麗に笑った、その人。
「…こんなトコロにいたのね葉奈ちゃん。」
「……こんにちは」
顔を見ないように俯く。
きっと面白いものを見つけたような表情をするんだ、この人も。
「こんにちは。もう声は治ったのかしら?」
「―――……」
反射的に自分の首を両手でさする。
声のことまで知ってるんだ…。この人一体―――?