君桜
「茜…何やってるんだよ。さっさと帰れ」
部屋の奥から出てきた学さんの声にあたしと彼女がそっちを向く。
――と。あたしを見て目を見開く学さん。
「…葉奈?」
何やら焦って玄関から出てきて腕を掴み勢いよく中に入れた。
…きっと自分一人では動けなかった。
正直言って学さんに引っ張ってもらって助かった…。
あたしを自分の背中に隠すように立ちはだかり、向き直った学さん…。
「……何した?」
威嚇するような、声。
「やだなぁー…。そんなに警戒しないでよ。何もしてないわ。ただ、声は大丈夫?って聞いただけで。昔ちょっと会ったことあるのよね。この子」
その言葉にビクッと上がった肩。
学さんは、多分、気づいた…。
その証拠に腕を掴む力が強くなったから。