君桜



「…学。今、その子と住んでるの?」



ニッと笑った、茜さん。



「……だから?」



低い声で威嚇するように茜さんに言い放つ。


あたしはただ、後ろで震えていることしかできなかった。


「その子、やめといたほうがいいわよ」


「…ッ!!」


やっぱりこの人知ってるんだ…!!


「や、めてください…」


絞り出すような声が出た。でも蚊の泣くような小さな声できっと茜さんには聞こえていない。


「知ってるの?学、その子のこと全て知っていて一緒に暮らしているの?」


何を言うつもりなの…?



「お前には関係ないだろ。いいから帰れよ」



茜さんは一向に帰ろうとしない。


むしろだんだん玄関に近づいてきている。


言うつもりだ、きっと。



学さんに、あたしの過去のこと。



あたしを見た最初から、きっと決めていたんだ。



< 179 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop