君桜




「…自殺…?」



学さんの驚愕を含んだ声が響いた。



「葉奈…?」



あたしを振り返る。



でも、あたしの目線は学さんとは合わない。


だってあたしの目線の先には―――、




笑いを含んだ表情をしている茜さんに向いているのだから。





彼女はにっと笑ってあたしのほうを見てくる。



きっと、これで学さんはあたしのことをキライになるんだろうな。



彼女はそれが狙いで言ったんだろうな。




そんなことを冷静に考えている自分に少しだけ自嘲的な笑みを浮かべてしまった。




あたしは何のためにわざわざ危険をおかしてまで、この箱を取りに行ったんだっけ。



学さんに自分の言葉で話すためじゃなかったの?



学さんに自分の気持ちを言うためじゃなかったの?



この人の声が引き金となって、あたしはそういう決意をしたんじゃなかったっけ…?



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