君桜
息を大きく吸い込むと、突っかかっていたようなものがスゥゥっと消え、喉に新鮮な空気が入ってくる。
それがとてつもなく安心した。
あたしは時々、声が出なくなる。
それは昔からのこと。
原因は分からないけど、次第に治るだろうと言われ、その言葉を信じてきたけど…
結局、治らなかったし。
「お前、名前は?」
あたしのとなりに腰をおろし、その人は煙草に火をつけた。
「…はな…」
「はな?」
コクンっと首を振る。