君桜



「ちょっ…!」



「しっ。黙ってな」





温かくて大きい掌があたしの後頭部に添えられ、胸に押し付けられる。



「葉奈ァァァァ!」



アイツの声が、迫ってくる。



だんだん、一歩ずつ、確実に…。



「葉奈ァ!」



やめて。


やめて。


あたしの名前を、呼ばないで。


両手で耳をふさぐ。



あたしの手の上からまた、大きな掌がかぶさってくる。




…この人、初対面なのに…安心できる。



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