君桜
「…学さん…」
「ん?」
優しい目をしてあたしのほうを向いてくれる。
「…学さんは独り暮らし?」
「ああ」
「こんなマンションに?」
「こんなとは失礼な」
ハハっと冗談交じりにそう言った。
「…だって、ここって…高層マンション…」
「まぁ、細けぇ事は気にすんな」
そう言ってあたしの頭を優しく撫でた。
学さんが途中で買ってくれた安いビーサンでエレベーターに乗り込む。
学さんがあたしの靴を買うとか言って、ブランド店に入って行ったのには驚いた。
慌てて「ダイソーで売ってるビーサンでいいよ!」と、言った。
そしたら「あんな安っぽいもん、履かせるわけにはいかねぇよ」とか言いだした。
もう、理解不能だ。