君桜



「顔、赤――――」


「見るんじゃねぇよ」


「きゃ!」


きつく学さんの胸に押し付けられる。




て言うかまず、学さんがあたしに見惚れるわけないよね。


だって、昨日会ったばかりだし。


あたし、どうしようもなく変哲な奴だし。


好かれないし、

愛されないし、

居場所はないし、



―――感情は、ないし。





そうだよ。


あたし、最近、何を言われても何も感じなくなってきちゃって。


アイツだけ、アイツだけ、あたしに恐怖を与えられる。


アイツ、だけ。





今、血眼になってあたしを探してるのかもしれない。


…殺すために。


あたしを、地獄に、陥れる、ために。


昨日、夜。


あそこで学さんに会っていなければ、あたしは…今。


どこにいて、何をして、どういうことを感じていたのだろうか。


< 54 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop