君桜
「顔、赤――――」
「見るんじゃねぇよ」
「きゃ!」
きつく学さんの胸に押し付けられる。
て言うかまず、学さんがあたしに見惚れるわけないよね。
だって、昨日会ったばかりだし。
あたし、どうしようもなく変哲な奴だし。
好かれないし、
愛されないし、
居場所はないし、
―――感情は、ないし。
そうだよ。
あたし、最近、何を言われても何も感じなくなってきちゃって。
アイツだけ、アイツだけ、あたしに恐怖を与えられる。
アイツ、だけ。
今、血眼になってあたしを探してるのかもしれない。
…殺すために。
あたしを、地獄に、陥れる、ために。
昨日、夜。
あそこで学さんに会っていなければ、あたしは…今。
どこにいて、何をして、どういうことを感じていたのだろうか。