君桜
「…学校…制服がないから…」
きっとあの家に寂しそうにして待っている。
あたしはもう、戻れないところに。
「ああ、そうだった。お前、転校しよっか?」
「…へ?」
間抜けな声が口から出る。
学さんがそれに驚いた顔をする。
そ、そんな顔、しない出くださ…い。
「学さん、この部屋、クーラー効き過ぎじゃない?」
さっきから寒いって思ってたんだけど。
「そうか?24度だぞ?」
「……そっか…」
外の気温は今日はこの夏一番の猛暑日らしく、34度。
「気のせい、かな…」
「お前の頭ならここにいけるだろ」
「…ここって…」
あたしの目の前に広げられたパンフレット。
それは紛れもなく、高校のパンフレットで…。
「‘‘蘭華学園’’…」
ら・ん・か・が・く・え・ん
県一番の名門。
「む、無理無理無理!!」
学さん、何考えてんの!?