君桜



「…、葉奈」


いきなり肩をぐっともたれ、身体を起こされた。


「…やっぱり…」


「……っ、はぁ…」


「具合悪くなったら言えっつったろ?」


視界がぼやける。


…あたしは今、学さんに頭を押さえられ抱きしめられている。


顔を見られたくない。


きっと今、泣きそうな顔、してるから。


「優、悪ィ。ノロケなら今度聞いてやる。タクシー呼んでくれないか?」


低く優しい声が響いて聞こえる。


「は?何?もう帰んの?…葉奈ちゃん!?」


「は、葉奈ちゃん!!」


優さんと美羽ねぇの焦った声。


「…葉奈」


そっと頭を撫でてくれた。






あたしの意識はそこで途絶えた。








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