運命の約束
紺色
卒業式。
俺は彼女と話したかった。
何か一言でいいから話したかった。
どうやって声を掛けたら自然だろう…。
そんなことを前の夜から考えていたらまったく眠れず、朝早く家を出た。
まだ生徒は誰も登校していない学校に着いた。
仲間と離れる卒業式は辛い。
それに、恋愛のひとつもなく卒業か…。
ぼんやり考えながら屋上に続く階段を上った。
屋上は3年生しか入らない場所。
…誰か居る。
こんな早く登校してた人、俺以外にもいたのか…。
ゆっくり近付いて行ったとき、驚いたようにその人は振り返った。
その人を見て、俺は足が止まった。
彼女だった。
泣いているように見えた。
その瞳は少し青みがかっていた。
深い紺色…。
近くで彼女を見たことがなかったから知らなかった。
彼女の瞳は黒くなかった。
俺は見とれていた。
なんて綺麗な瞳なんだ…。