幻想童子

変わりすぎた生活

それは突然だった。

相手は会社の同僚で神妙な様子だったので、訳を聞くと

会社が倒産したらしいとのことだった。


ほとんどの社員がリストラされ、その内のほとんどが若手の社員でそのリストの中に俺も入っていたということだった。


「そういうわけなんだ」
「そうか…」

「お前いいのかよ!?」
「いいって何が?」

「このままクビになるんだぞ?いいのかよ?」

いいも何も俺たちでどうすることもできないし、何よりも正直あの会社に未練はなかった。

「まぁ仕方ないんじゃないか?訴訟したところで会社に戻れるわけじゃないだろ?」

「でも今から仕事探して見つかると思うか?」

確かに今のご時世で仕事を探す方こそ無謀に近い。だからといって訴訟したとしてもそれにかかる費用を出せるかどうかも怪しいものだ。

話に詰まっていると同僚がある提案を言ってきた。
「だったら、いっそのこと会社を立ち上げてみないか?」

「立ち上げる?」

「働き口が見つからない、会社に戻れない、訴訟起こしても元が取れるかもわからない。ならいっそのこと自分たちで会社を経営してみないかって」

「簡単に言うなよ。大体立ち上げに必要な資金はどうするんだよ?」

「みんなで出し合うってのはどうだ?」

「みんなって…クビになった連中か?」

「おう!全員で合わせれば立ち上げに必要な資金くらいはなんとかなるし、知り合いにもちょっとコネがあるしさ。なあやってみないか?」

そこまで大きな会社になるとは思えない。でもあんな会社でやるよりこういう所でやる方が向いているのかもしれない。

何よりも新しいものをやるということでみんなの士気が高い。

最初からあるものに準ずるよりも、何か初めから作っていくような挑戦こそが若い内に一番経験になると思う。


「新しいものへの挑戦か…」

「その通り!だからさお前も一緒に…」

「悪い、ちょっと考えさせてくれ。返事はするから」

「わかった。いつでも待ってるぜ」

「おう。ありがとう」

そこで電話は終わった。この電話をきっかけに俺の何かが変わったような気がした。
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