幻想童子
「くそぉ、なかなかうまくいかないなぁ」

それから数週間が経ちいろんなところを当たってみたがなかなか採用してもらえない。

今日も惨敗報告をしにノリさんの元へ

「ちわーっす」

「おう」

「おかえりー。」

「……」


「ん?ちょっとまて!なんであんたがいるんだ!?」

作業場へ行くとなぜか葉月がいた。

「あんたをこの辺で見たから近くにいたらノリッチと偶然会って、話が弾んでね」

「会ったばかりでノリッチかよ…」

そういえばノリさんはこういうノリの人が結構好きだったな。

「なんだお前の知り合いだったのか?」

「知り合いっていうか、まぁ知り合いですね」

「何言ってんのさぁ、あたしとあんたの仲じゃないの」

なんでこの人こんなにフレンドリーなんだよ、とか思いつつコーヒーを淹れに向かうと

「あ…」

「よう、嬢ちゃんも来てたんだ」

あの少女とも出会った。相変わらず不思議な雰囲気を醸し出している。

透き通った銀色の長い髪…
紅く光る眼…

病弱のような感じをさせない真っ白な肌…

知り合いでなければ近づきがたい感じなのだが不思議とそんな感じはしなかった。

「嬢ちゃんも葉月に振り回されて大変だな」

そう言って頭を撫でると不思議そうな顔をした。
「そんなことないよ…」
「そうなのか?まぁこんなことに付き合ってやれる奴なんて嬢ちゃんくらいなものだしな」

キッチンに向かうと嬢ちゃんもついて来て手伝ってくれた。

……


数時間が経ち、グダグダと雑談をしていた。
世間話というより個人的な愚痴やら相談やらで中身がない。

時計の針も深夜の1時を指しており、会話に夢中になりすぎていた。

「葉月、そろそろ時間やばくないか?」

「うーん、今日はここで泊まるわ」

「はぁ!?」

行き当たりばったりにも程があるだろう…。
大体ノリさんが許可するはずもないし

「俺は泊まっていっても構わんよ」

意外にもあっさり許可が出て、二人は泊まることになった。
俺は帰れと言われたが元々泊まる予定立てていたのは俺の方だったということを思い出すと、嫌そうな顔をされた。

なんだこの扱いの差…
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