幻想童子
車に乗せられ、家路につく

「なぁ?お前漫画描いてるんだよな?」

急に同僚がそう切り出してきた。

「そうだけど、なんでぃ急に?」

「この前お前の描いた漫画見たんだけど、変わった絵柄だな」

「よく言われるよ」

確かに俺の絵柄はあまり一目に触れることがないいわゆるギャルゲーに近い絵柄だ。
そのせいでいろんな人からブーイングを受けたりしている。

「絵柄変わってるけど、なんていうか、一生懸命さがあるよな」

「はぁ?」

「いやバカにしてるわけじゃないぞ。なんか見とれるっていうか、ついつい何度も見てしまいたくなるような惹きつけるものがあるよな」

そんな風に言われたのは初めてだった。
上手いと言われるよりこっちの方がストレートに気持ちが伝わってきて嬉しかった。

「そうか…ありがとう。でもこの作画のせいでまた打ち切りになったよ」
「なんでだよ!?あんなにいい絵柄なのに」

「お前みたいにウケる人もいれば、それが気に入らないって思う人もいるだよ」

そう。万人受けしない。それが俺の作画だ。一部認めてくれる人がいても世の中は広く殆どが認めてくれない。そんな悲しい世界だなんて信じたくない

「ならさぁ?なんで漫画描いてるんだ?」

「え?」

なんでだろう


考えたこともなかった。
なんで俺は漫画を描いてるんだろう?

「なんでだろうな…」

「いや自分のことだろう?俺に聞かれても」

「確かになぁ」

「?」

何を聞いてるんだ俺は

ていうか
そもそも俺がこの仕事をするようになったきっかけってなんだったっけ…
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