BLACK

「もう遅いよ」


待ってくれ!


…どうなってるんだ?


私が…
もう一人の私の中にいる?



-ピンポーン


もう一人の私によって、隣家のチャイムが鳴らされる。


止めろ!


止めてくれ!



「どうもこんにちわ!」


もう一人の私は愛想良く挨拶する。


「あら、お隣りの!どうかしました?」


隣家の奥さんが顔を出す。


お願いだ!


逃げてくれ!



「いや、今日ももちゃんの誕生日だと聞きましてね」


もう一人の私は笑顔で花束を差し出している。


お願いだ。


もう帰ろう。


「まぁすいません!こんな綺麗な薔薇を!」


奥さんは嬉しそうに花束を受け取った。


「では、私はこれで」


はぁ…


良かった。


帰ってくれるのか。



「あ!もうすぐうちの子も帰ってきますから、良かったらご一緒におやつにしませんか?」



「私なんかが…お邪魔でしょう?」


「いいえ、あの子も喜びます!」


「では…」



もう一人の私は、にやりと笑った。


そして隣家の玄関扉をゆっくり閉めた。




そんな…

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