BLACK

「大丈夫ですか?」


ウエイターの青年が心配そうに話しかけて来た。


大丈夫よ。


と言いたいのに、言葉に詰まってひたすら頷いた。


「よろしければ、書いてみては?」


不意に差し出された紙には


『お願いレター』


の文字が。


何これ?


「うちのお店の看板なんですよ!お客様からも願いが叶うって好評で」


ウエイターの青年は品よく笑って説明してくれた。


願い事か…。


出来る事なら最後にもう一度…


私はペンを取り、お願いレターに書いた。


『母と父に会いたい』

と。



書き終わったお願いレターの上に、ボタボタと涙が零れ落ちた。



どうにもならない。


もう迷惑もかけられない。


こんな惨めな姿で、顔向け出来るわけない。

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