BLACK
母だ。


「……」


「もしもし?」


「……」


言葉が見つからない。


「もしもし?」


「…うっ……っ…」


私は受話器越しに泣いていた。


情けなさに。


いったい何をしてたんだろう。


母の声は少し掠れていて、過ぎた時間の長さを感じた。


「有希ちゃん?そうなの?」



「っ…母さん……」



「どうしたの!元気にしてるの?」



優しい母の声に涙が止まらない。



「母さん…ごめんね…」



「何かあったの?」



「私…もう生きていく自信ない…」



「何言ってるの!」



「最後に…っ声が聞きたくて…」



もう駄目だ。


これ以上話したら頭がおかしくなりそう。



私は辛さに耐えかねて受話器を置こうとした。


でも。


母の声でピタリと止まった。





「帰っておいで」


< 19 / 43 >

この作品をシェア

pagetop