BLACK
看板娘の愛子ちゃんがにこやかに迎えてくれる。
若いのに良くやってくれている。
「ごめんね~。得意先と話し込んじゃって…」
店の奥に入り、履き慣れないパンプスを脱ぐ。
締め付けられていた親指が赤く腫れていた。
「イタタタ」
「あ~、外反母趾になりますよ?」
後ろから愛子ちゃんが覗き込んでいた。
「やっぱりパンプスは駄目ね」
でもね、履いていたい。
あなたが初めて「綺麗だ」って言ってくれたのは…。
背伸びして履いた、少し高めのパンプス。
あなたは覚えてくれている?
「あ、そうそう」
愛子ちゃんが私を手招きする。
「?」
近付く私に笑顔で手を差し出した。
「はい!」
「…何?」
受け取ったのは緑色をした小さな箱。
丁寧に金色のリボンがかけてある。