BLACK
『あの子の目が治りますように』


『僕の目が見えなくなりますように』



書き終えた紙を四つ折りにして、店内にあるアンティークの赤いポストに入れた。


両手を合わせて。

叶わぬ願いを込めた。


窓の外はあの日と同じ雪だった。



これが最後に見る景色か。


あの子が見たのも、この景色だったんだね。


店内の振り子時計が、夜の8時の鐘を鳴らす。


僕はカウンターに置いたナイフを握った。


ゆっくり目の前に近付けながら。



生まれて初めて神様に祈った。



僕の代わりに
あの子の目が
見えますように…

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