BLACK
「だ、大丈夫?」


じゃなさそうだ。


少女はピクリとも動かない。


僕はしゃがみ込んで少女の目の高さまで視線を下ろした。


それは綺麗な栗色の瞳が、真っ直ぐ前だけを見ていた。


「大丈夫?痛かった?」


「大丈夫です」






何かへんだ。


「夜はあぶないよ?」


「大丈夫です」







もしかして…



「君、目が見えないの?」


真っ直ぐ動かない瞳。

合わない目線。


よく見れば小さな白い杖。



「はい」



少女は小さな声で答えた。


同時に


─グルルルル


「何だ、お腹減ってるの?」


今度は声は出さず頷く。


少し申し訳なさそうに、恥ずかしそうに頷く。
< 3 / 43 >

この作品をシェア

pagetop