櫻井くん。
あのときは奈々の勢いに圧倒されてなんだかよく分からなかったけど、家に帰ってからは奈々の言葉が頭のなかをぐるぐる回っていた。
もしも櫻井くんが私の彼氏だったら…。
そんなこと、考えたことも無かったのに。
「…なにボーッとしてんの?」
「えっ!ぼ、ボーッと?してないしてない!」
「嘘。櫻井のこと考えてたんでしょ。」
「違っ…」
「ほう。図星かぁ。」
奈々に嘘は通用しない。
なんでこんなに見透かされるのか、ある意味怖いくらい。
「で、例のもの持ってきた?」
昨日と同じように、今日はスティックパンをほう張りながら、奈々は私にたずねた。
奈々のお昼ご飯といったらいつも菓子パンだ。
しかも甘~いの。