櫻井くん。
「百合、聞いてる?持ってきた?」
「うん…持ってきたけど。」
机の横にかけていたカバンからノートを取り出す。
と同時に、奈々が素早く奪い取った。
「ちょっと!」
「いいじゃん見せてよ。」
奈々はペラペラとノートをめくり、感心したように何度もうなずく。
昨日、奈々がこんな提案をしてきた。
古典のノートの複製を櫻井くんにあげたらいいんじゃないか、と。
「櫻井は古典のノートとってないんでしょ?だったらテスト前助かるって絶対!喜んでくれるよ!」
…というのが奈々の言い分で。
本当に渡すかどうかはさておき、私は今日徹夜で古典のノートを書き写してきた。
書き写すだけでそんなに時間がかかってしまったのは、何度も何度も書き直したから。
字が汚い女の子なんて絶対いやだし…。
なるべく役立つように色々と書き加えていたら、いつの間にか朝になっていた。