櫻井くん。
表紙に『古典』と書かれた青いノートを、黙ってじっと見つめる櫻井くん。
そりゃそうなるよね。
「あのね。櫻井くん、古典のノートとってないでしょ?だからテスト前に役に立つかなぁって思って。」
櫻井くんはびっくりしたような顔で私を見上げ、差し出されたノートを受け取った。
私はしゃがんで、櫻井くんと目線の位置を合わせる。
「でも、迷惑だったら返品していいから。」
私がぎこちなく笑うと、櫻井くんは首を横に振った。