櫻井くん。


手首を強く握られて無理やり立たされると、奈々は私を引っ張って教室を出た。



どこに行くのかと思えば、行きついた場所は――女子トイレ。



個室に誰もいないのを確認してから、奈々は興奮した様子で私の顔をのぞきこんだ。



「ねぇ、櫻井なんだって!?反応は!?」


「うん……ありがとう、って…。」


「うんうん。…で?それだけ??」


私のこんな様子を見て、それだけじゃないのはわかってるんだと思う。


奈々は期待に胸を膨らませたように目をキラキラさせて私をじっと見つめた。



「…今日の放課後、自習室に来いって…。」


語尾が小さくなりつつも言い切った私の言葉に、もともと大きな奈々の目がさらに大きく見開かれた。



「え…まじで!?」


「うん…まじで。」


私自身も今ようやくこの状況が夢ではないことを理解したくらいだ。


なんで呼び出されたのかはわからないけど…。



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