すきのきもち



「歩香…………」


「えっ?……」


「歩香にちゃんと陰野君の気持ち伝えたの?」


「いや………」


「後悔だけはしないでね。私、陰野君の事、まだ一時は忘れられない。でも次会った時は…お互い笑顔で…ね。」



そう言って桜木は少し寂しそうな顔で微笑んだ。



「あぁ……」


「それぢゃぁ…バイバイ。」


「元気でな。」



お互いに背を向けると、お互い別々の道に歩いて行く。



二つも同時に手に入れる事は出来ない。



どちらかを必ず手放さなければいけないんだ。


桜木と出会った事に、後悔はしたくない。




桜木との時間があったから、今の時間、そして今の自分があると思いたい。



< 88 / 126 >

この作品をシェア

pagetop