冬うらら~猫と起爆スイッチ~
11月
11/29 Mon.-1
□1
案内されたボックス席は、薄暗くて空気がよどんでいた。
中央の方の大きなボックスでは、会社帰りだか接待だか分からない背広連中が、ギャーギャー騒ぎながら下着姿の女に抱きついていたりする。
壁際のボックス席は、一人で来る客用のものだ。
おそらく、故意に照明が当たらないようにしているのだろう。
いかがわしさ絶大だった。
何しろ、ここは――ランジェリーパブなのだから。
フン。
自分も一人用ボックスの連中と同じムジナなクセに、他の暗がりでの怪しさを鼻でせせら笑った。
アタッシュケースを座席に放り投げ、背広を脱いでその上に放り投げる。
ただでさえ緩めていたネクタイを、更に長い指でぐっと引っ張って緩める。
こんな格好なんか、彼――カイトは大嫌いだった。
普段は、極力背広を着なくていいような仕事をするのだが、どうしても会社を経営している以上、その格好は避けられない。
そう。
カイトは、代表取締役社長なのである。
彼が一から作った会社だった。
全ては、カイトの作ったパソコンゲームが、コンテストで賞を取ったことから始まったのだ。
そこで彼は知ったのである。
ソフトは、物理的コストがかからないことに。
必要なのは才能的コストだ。
カイトには、それがあった。
しかし、彼になかったものがある。
経営手腕である。
カイトの苦手とする、対外的な仕事をする人間が必要だった。
だから、その方面に才能のある幼なじみを、無理矢理自分の作る会社に引きずり込んだ。
カイトが21歳の時のことである。
それから2年――いまや、押しも押されぬ大ソフトメーカーに成り上がったのである。
「KO-NAN」
ゲームソフトには、そんな風に会社名が記されているハズだ。
鋼南電気。
それが、カイトの会社。
案内されたボックス席は、薄暗くて空気がよどんでいた。
中央の方の大きなボックスでは、会社帰りだか接待だか分からない背広連中が、ギャーギャー騒ぎながら下着姿の女に抱きついていたりする。
壁際のボックス席は、一人で来る客用のものだ。
おそらく、故意に照明が当たらないようにしているのだろう。
いかがわしさ絶大だった。
何しろ、ここは――ランジェリーパブなのだから。
フン。
自分も一人用ボックスの連中と同じムジナなクセに、他の暗がりでの怪しさを鼻でせせら笑った。
アタッシュケースを座席に放り投げ、背広を脱いでその上に放り投げる。
ただでさえ緩めていたネクタイを、更に長い指でぐっと引っ張って緩める。
こんな格好なんか、彼――カイトは大嫌いだった。
普段は、極力背広を着なくていいような仕事をするのだが、どうしても会社を経営している以上、その格好は避けられない。
そう。
カイトは、代表取締役社長なのである。
彼が一から作った会社だった。
全ては、カイトの作ったパソコンゲームが、コンテストで賞を取ったことから始まったのだ。
そこで彼は知ったのである。
ソフトは、物理的コストがかからないことに。
必要なのは才能的コストだ。
カイトには、それがあった。
しかし、彼になかったものがある。
経営手腕である。
カイトの苦手とする、対外的な仕事をする人間が必要だった。
だから、その方面に才能のある幼なじみを、無理矢理自分の作る会社に引きずり込んだ。
カイトが21歳の時のことである。
それから2年――いまや、押しも押されぬ大ソフトメーカーに成り上がったのである。
「KO-NAN」
ゲームソフトには、そんな風に会社名が記されているハズだ。
鋼南電気。
それが、カイトの会社。
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