冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
「すみません……」
彼女は、膝一つ分だけ彼から離れて座った。
警戒されたとしても、カイトには文句を言えるハズもなかった。
二人。
お互いを見ないまま、ただ沈黙がもやになる。
「何で……ワケ話さねーんだ」
長いもやの中で、少しだけ落ちつくことのできたカイトは、空になったグラスを持ち上げながら呟いた。
彼女が、ウィスキーの瓶を持とうとしたが、それを途中で奪い取る。
勝手に自分でつぎ始めた。
「言っても……」
彼女は声を震わせながら、ようやく口を開ける。
「言っても…もう、しょうがないことですから」
うつむいて。
けれども、覚悟が全然足りていない声。
この世界で彼女が生きていくには、どれくらい傷だらけにならなければいけないのか。
「クソッ……」
自分の苛立ちを、そう声にしてしまった。
隣の身体が、それに震える。
何で、今日会ったばっかりのランパブのホステス相手に、ムキになっているのか分からなかった。
何で、こんなにイヤなのかも分からなかった。
隣を見る。
下着姿であったとしても、全然そういう欲求が煽られなかった。
何かしようものなら、自分が世界で一番サイテーな男に成り下がったような気がする。
ランパブだろうがソープだろうが、行ったことのある男なのに、だ。
けれども、自分以外の男が、彼女を見て自分と同じように考えるだろうか。
絶対に違うだろう。スレてないのをいいことに、彼女を――!!
ガタッ。
カイトは立ち上がった。
耐えられない想像が、頭の中を渦巻いてしまったからだ。
やっぱり、どうしても、絶対、イヤだった。
「お客様……」
ボックスから、彼が出て行こうとするのに驚いて、彼女が声をかけようとする。
カイトは、くるっと振り向いた。
「いいか……そっから絶対出てんじゃねーぞ」
そこにいろ!
強く言い捨てると、ウィスキーで汚れた姿のままボックスを離れたのだった。
「すみません……」
彼女は、膝一つ分だけ彼から離れて座った。
警戒されたとしても、カイトには文句を言えるハズもなかった。
二人。
お互いを見ないまま、ただ沈黙がもやになる。
「何で……ワケ話さねーんだ」
長いもやの中で、少しだけ落ちつくことのできたカイトは、空になったグラスを持ち上げながら呟いた。
彼女が、ウィスキーの瓶を持とうとしたが、それを途中で奪い取る。
勝手に自分でつぎ始めた。
「言っても……」
彼女は声を震わせながら、ようやく口を開ける。
「言っても…もう、しょうがないことですから」
うつむいて。
けれども、覚悟が全然足りていない声。
この世界で彼女が生きていくには、どれくらい傷だらけにならなければいけないのか。
「クソッ……」
自分の苛立ちを、そう声にしてしまった。
隣の身体が、それに震える。
何で、今日会ったばっかりのランパブのホステス相手に、ムキになっているのか分からなかった。
何で、こんなにイヤなのかも分からなかった。
隣を見る。
下着姿であったとしても、全然そういう欲求が煽られなかった。
何かしようものなら、自分が世界で一番サイテーな男に成り下がったような気がする。
ランパブだろうがソープだろうが、行ったことのある男なのに、だ。
けれども、自分以外の男が、彼女を見て自分と同じように考えるだろうか。
絶対に違うだろう。スレてないのをいいことに、彼女を――!!
ガタッ。
カイトは立ち上がった。
耐えられない想像が、頭の中を渦巻いてしまったからだ。
やっぱり、どうしても、絶対、イヤだった。
「お客様……」
ボックスから、彼が出て行こうとするのに驚いて、彼女が声をかけようとする。
カイトは、くるっと振り向いた。
「いいか……そっから絶対出てんじゃねーぞ」
そこにいろ!
強く言い捨てると、ウィスキーで汚れた姿のままボックスを離れたのだった。