冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
そうして、彼女の腕をつか。
つか。
つか―― む寸前で一瞬ためらう。
昨日から、『触れる』という行為には、大きくひっかかっている彼なのだ。
容易には、そのタガは外れない。
クソッ、しょうがねーだろ!
恐ろしく早口で、カイトは自分を納得させようとした。
来いと言ってるのに、メイは動かないのである。
このまま、寒い階段にいつまでもいるワケにもいかなかった。
グググッッ。
カイトは、指先を彼女の側で止めたまま、無駄に力だけを込めた。
まだ、手首を握れもしないくせに。
メイは、すぐ側の彼を見ることも出来ないらしく、うつむいている。
チクショウッ! そういうんじゃないからな!
カイトは。
自分と彼女に大声で、そう言い訳した―― 心の中で。
変な意味で触るんじゃない、仕方なくだ。
そう言いたかったのだが、心の中ですらうまく言葉が操れなかった。
しかし、その言葉のおかげで、ようやく自分の心にあるセーフティが、一つ外れたのだ。
気合いを込めて、メイの手首をぐいと掴むと、小さく「あっ」という声が漏れた。
ズキンッ。
それがカイトの胸を刺したが、感じないフリをしながらぐいと引っ張ったのである。
これは、そんなんじゃねーんだからな!
やっぱり、心の中で大声で言い訳をしながら、彼女を引っ張って階段を下り始めた。
後ろを振り返らないようにしながら、ずんずんと進む。
一番下までたどりついた。
すると―― 玄関のところで、ハルコが2人を見ているではないか。
あの微笑みを浮かべて。
カァッ。
一気に、恥ずかしさが全身を巡る。
何でそこにいんだよ!
そう悪態をついたところで、ハルコの視線からいまの事態を消すことはできない。
「今度…相談したいことがあるの」
彼女は、どうやらそれを言い忘れていたらしい。
しかし。
いまのカイトには、何も聞こえなかった。
彼女を無視して、早く視界から逃げたい気持ちで一生懸命だったのだ。
ハルコに反応も返さず、メイの手を、前よりももっと強く引っ張って逃げちらかしたのだった。
そうして、彼女の腕をつか。
つか。
つか―― む寸前で一瞬ためらう。
昨日から、『触れる』という行為には、大きくひっかかっている彼なのだ。
容易には、そのタガは外れない。
クソッ、しょうがねーだろ!
恐ろしく早口で、カイトは自分を納得させようとした。
来いと言ってるのに、メイは動かないのである。
このまま、寒い階段にいつまでもいるワケにもいかなかった。
グググッッ。
カイトは、指先を彼女の側で止めたまま、無駄に力だけを込めた。
まだ、手首を握れもしないくせに。
メイは、すぐ側の彼を見ることも出来ないらしく、うつむいている。
チクショウッ! そういうんじゃないからな!
カイトは。
自分と彼女に大声で、そう言い訳した―― 心の中で。
変な意味で触るんじゃない、仕方なくだ。
そう言いたかったのだが、心の中ですらうまく言葉が操れなかった。
しかし、その言葉のおかげで、ようやく自分の心にあるセーフティが、一つ外れたのだ。
気合いを込めて、メイの手首をぐいと掴むと、小さく「あっ」という声が漏れた。
ズキンッ。
それがカイトの胸を刺したが、感じないフリをしながらぐいと引っ張ったのである。
これは、そんなんじゃねーんだからな!
やっぱり、心の中で大声で言い訳をしながら、彼女を引っ張って階段を下り始めた。
後ろを振り返らないようにしながら、ずんずんと進む。
一番下までたどりついた。
すると―― 玄関のところで、ハルコが2人を見ているではないか。
あの微笑みを浮かべて。
カァッ。
一気に、恥ずかしさが全身を巡る。
何でそこにいんだよ!
そう悪態をついたところで、ハルコの視線からいまの事態を消すことはできない。
「今度…相談したいことがあるの」
彼女は、どうやらそれを言い忘れていたらしい。
しかし。
いまのカイトには、何も聞こえなかった。
彼女を無視して、早く視界から逃げたい気持ちで一生懸命だったのだ。
ハルコに反応も返さず、メイの手を、前よりももっと強く引っ張って逃げちらかしたのだった。