冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 他の誰にも感じたことのない気持ちの波が胸に打ち寄せて、無造作に穴を開けていく。

 考えるまでもなく、おかしいことなんか分かっていたハズだ。

 どうしてこの女を、最初に拾ってきてしまったのか。

 その理由すら、インスピレーションとしか答えられないのである。

 売れるゲームを作る時のインスピレーションと似ていて、少し違うものだった。

 胸が騒いだ。

 あんなところで働かせておきたくなかった。
 でも、解放したくもなかったのだ。

 ここに置いておきたかった。

 服を着せて、普通の生活をさせたかった――自分の側で。

 何だと?

 愕然。

 最後に考えた自分の感情に、カイトは目をむいた。

 自分の側で、といま思ったのだ。

 オレの側で。

 彼が、メイにいて欲しいと思っていたのだ。

 ま、待て…クソッ!

 自分の感情の暴走を止めようと、心の声を荒げた。

 普通、見ず知らずの若い女を、理由なく側に置いておきたいと思うものじゃない。

 いや、余程の女好きや欲求不満のガキならそう思うかもしれないが、カイトはどっちとも一緒にされたくなかった。

 これまで、女にはそこそこの興味しかなかったのである。

 オレは、何を考えてんだ!

 殴り飛ばしても叱りとばしても消えない感情に、カイトは大きく戸惑っていた。

 昨日より、もっと膨らんだ感情だったからこそ、ここまで彼の目について、目障りに思ってしまったのである。

 たった1日。

 どう計算しても、24時間よりは少ない時間だ。彼女と出会って。

 そのたった24時間で、どうしてこんな酷くなるばかりの、目障りな感情に振り回されなければならないのか。

 カイトは、立ちつくしていた。

 目の前には、ハルコの用意した温かい部屋と食事が待っているというのに、一歩も動けなかったのである。
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