冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「お客様…いかがなさ…!?」

 ザッザッザ、ダン!

 出入り口のところにある受付に、カイトは大股でやってくると、そのカウンターにガンと片肘をついた。

「おい…オレんトコにいる、あの女は何だ?」

 顎で、暗いボックスを指す。

 本人がしゃべらないなら、周囲にしゃべらせるだけだ。

 あれだけ毛色の違う女だから、周囲からも浮いているに違いなかった。

 受付の、ぴっちり派手なスーツを着込んだ女は、横目でカイトが指すボックスを確認すると、にっこりと営業の笑みを浮かべた。

 派手な化粧でごまかしてはいるが、結構年齢は高そうだ。

 店の中のことには詳しいだろう。

「ご不興を買いましたのなら、すぐに別のホステスに替えさせていただきますが…」

 ウェイターと同じことを言った。

「んなんじゃねぇ……何で、あんなのが、ココで、働いてんだ」

 カイトは、一単語ずつ区切って、つきつけるように言った。

 聞いていることの、どれもこれもが気に入らない。

 それがにじみ出ている声だった。

「申し訳ありませんが、スタッフのプライベートまではお答えできかねま……」

 くだらない言葉が続きそうな予感は、最初からあったのだ。

 カイトは、尻ポケットから札入れを取った。

 そのまま、手を突っ込んで一掴み札を抜き出して、彼女の目の前に無言で置いた。

 これが、彼のやり方だった。

 強引で乱暴な経営。

 業界で、彼を形容する言葉がそれだ。

 このカイトの性格のせいである。

 それでも破綻しないのは、ソフトの質がズバ抜けて高いことと、サポート役がしっかりしているからだった。

 女は、焦ることなくそのお金を取って引っ込める。

 かなり肝のすわっている。

 ランジェリー女とは、格が違うとでも言いたげな表情で。

「お客様……よろしければ、私とあちらのボックスでお話しませんか?」

 空いている、別の個人用ボックスを指す。

 カイトは、無言で歩き出した。
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