冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
クッ。
しかし、背中には泣いている女がいる。
女を泣かす機会など、彼にはほとんどなかった。
そこまで、深く関わったことがないのだ。
高校時代は、彼もまだガキで。
女なんて――そういうポーズを作っていた。
大学に入ってからは、プログラミングで忙しくて、ついには会社まで作ってそれどころじゃなかった。
本格的に会社を大きくしてからは、寄ってくる女は全部違うものが目当てのように思えた。
要するに、いままで誰とも深い付き合いはなかったのである。
カイトの心は、いつも彼のものだった。
こんなに乱れたり、かきむしりたい気持ちになったことなんか。
こんなに。
カイトは眉間に強くシワを刻んだ。
顔を歪めて、でも、手を離さないと彼女が泣くのである。
彼に触れられると、メイは泣くのだ。
一度、ぐっと強く手首を掴んでしまった後――ようやく、カイトは指を解いた。
一本ずつ空気に邪魔されていく。
オレは。
手を離して、ゆっくりとカイトは振り返った。
心の内側から、何が出てこようとするのだ。
どんなしっぽの動物か、彼は見ようとした。
メイはうつむいている。
いまの彼の角度からでは、表情は分からない。
しかし、見てしまうとダメだった。
その震える小さな身体を、ぎゅうっと抱きしめたい衝動が腕に走るだけだったのだ。
かき抱きたいと。
そして、『泣くな!』と言いたかった。
「オレは…」
思っている言葉が、ふっと喉からこぼれた。
目をそらす。
もうメイは衣服を着ていて、見るのに何も問題はないというのに、うまくそれが出来なかったのだ。
この女を。オレは。
オレは、この女をほ…。
クッ。
しかし、背中には泣いている女がいる。
女を泣かす機会など、彼にはほとんどなかった。
そこまで、深く関わったことがないのだ。
高校時代は、彼もまだガキで。
女なんて――そういうポーズを作っていた。
大学に入ってからは、プログラミングで忙しくて、ついには会社まで作ってそれどころじゃなかった。
本格的に会社を大きくしてからは、寄ってくる女は全部違うものが目当てのように思えた。
要するに、いままで誰とも深い付き合いはなかったのである。
カイトの心は、いつも彼のものだった。
こんなに乱れたり、かきむしりたい気持ちになったことなんか。
こんなに。
カイトは眉間に強くシワを刻んだ。
顔を歪めて、でも、手を離さないと彼女が泣くのである。
彼に触れられると、メイは泣くのだ。
一度、ぐっと強く手首を掴んでしまった後――ようやく、カイトは指を解いた。
一本ずつ空気に邪魔されていく。
オレは。
手を離して、ゆっくりとカイトは振り返った。
心の内側から、何が出てこようとするのだ。
どんなしっぽの動物か、彼は見ようとした。
メイはうつむいている。
いまの彼の角度からでは、表情は分からない。
しかし、見てしまうとダメだった。
その震える小さな身体を、ぎゅうっと抱きしめたい衝動が腕に走るだけだったのだ。
かき抱きたいと。
そして、『泣くな!』と言いたかった。
「オレは…」
思っている言葉が、ふっと喉からこぼれた。
目をそらす。
もうメイは衣服を着ていて、見るのに何も問題はないというのに、うまくそれが出来なかったのだ。
この女を。オレは。
オレは、この女をほ…。