冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 そんなこと!

 メイは、ビックリした。

 符号が合ったのはいいが、まるっきりそれが信用に値しなかったのだ。

 彼は、勘違いをしているのである。

 カイトが、どうして自分のために早く帰ってくる必要があるのか。
 メイの想像では、該当するものが何もなかった。

 どういう原因かは知らないけれども、少なくともこの男は誤解している。
 もしかしたら、彼女について何の説明もしていないのかもしれない。

 どこから連れてきて、どういういきさつだったかとか。

 その事実には、ほんのちょっとだけほっとしたけれども、誤解のタネはそれだけとは思えなかった。

 朝、カイトのベッドにいたところを起こされたのだ。

 彼はバスルームにいて。

 まるで。

 まるで、だが。

 何かあった2人のように見える。

 ベッドとソファで寝たと言っても、誰が信用してくれるだろうか。

 事実、メイだって何かされないのは変だ、くらいは思ったのだ。

 しかし、カイトは何もしなかった。

 彼女に女として何も感じていないか、興味がないか、もしくはまったく別の目的があるのか。

「んだとぉ?」

 背中の向こうで、物凄く怒ったようなうなり声が聞こえた。

 怒って当然だ。

 ひどい勘違いなのだから。

 どんな条件が揃って、確信的に思えたとしても、それはまったくの誤解なのだ。

 自分の存在が、この2人の関係を悪くしているのではないだろうかと不安になる。

 カイトの方は怒りっぽくて、うまく状況説明ができないタイプのようだ。

 このままでは、すごくイヤなことになる。

 メイは、勇気を出した。

「あ…あの!」

 縦長の背中に向かって、大きな声をかけた。
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