冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
「何であの子のことを知りたいのかは分からないけれど……おススメはしないわよ」
ボックスに入るなり、女の口調が変わった。
受付用の顔から、即座に獲物を狙う豹のようなイメージになる。
骨の髄から、裏で生きてきた女の匂いだ。
「あの子には、ね…うちのボスに借金があるのよ」
タバコをふかしながら、彼女は言った。
予測の範疇だ。
やっぱりあの女は、自分の意思で、ここで働いていたワケではないのだ。
「父一人、子一人だったみたいだけど、その父親が過労死だか何だかして、フタを開けてみたら……娘に残ったのは、事業に失敗した借金だけってケースよ」
タバコを灰皿に置くと、手慣れた動きでカイトのために水割りを作る。
「でも、うちのボスが借金の相手でよかったわよ。まだ、ランパブで済んでるんだから。普通なら、ソープよ……分かるでしょ?」
きらっと、女の目が光った。
カイトは、無言で不機嫌を強める。
「でも…ソープに行くのも時間の問題かもねぇ。こういう商売は、慣れちゃったら、どんどんエスカレートしていくものだから…その方が、借金も早く返せるしね」
ふふっ。
女は、嬉しそうに笑った。
あの女が墜ちていく姿でも想像したのだろうか。
カイトの思いは、それとは反比例だというのに。
奥歯を、ギッと噛む。
眉がつり上がっているのを、自分でも気づけないまま。
「いくらだ?」
作って進められる水割りに手もつけず、カイトは早口で聞いた。
「さぁ? 1千万だか2千万だか忘れちゃった……家とか全部売っても、それくらい残ってるんじゃなかったかしら?」
若い女の子一人が背負うには、大きな金額よね。
カイトにしなだれかかろうとする身体を手で止めた。
そのまま立ち上がる。
「ちょ、ちょっと!」
まさか、彼が歩き去ろうとするなんて思ってもいなかったらしい。
慌てて呼び止める女に向かって、カイトは怒鳴った。
「………い!」
それを聞くと、女はひどく驚いた顔をした。
しかし、カイトは彼女の反応を待つこともなく、自分のボックスに戻り始めたのだった。
「何であの子のことを知りたいのかは分からないけれど……おススメはしないわよ」
ボックスに入るなり、女の口調が変わった。
受付用の顔から、即座に獲物を狙う豹のようなイメージになる。
骨の髄から、裏で生きてきた女の匂いだ。
「あの子には、ね…うちのボスに借金があるのよ」
タバコをふかしながら、彼女は言った。
予測の範疇だ。
やっぱりあの女は、自分の意思で、ここで働いていたワケではないのだ。
「父一人、子一人だったみたいだけど、その父親が過労死だか何だかして、フタを開けてみたら……娘に残ったのは、事業に失敗した借金だけってケースよ」
タバコを灰皿に置くと、手慣れた動きでカイトのために水割りを作る。
「でも、うちのボスが借金の相手でよかったわよ。まだ、ランパブで済んでるんだから。普通なら、ソープよ……分かるでしょ?」
きらっと、女の目が光った。
カイトは、無言で不機嫌を強める。
「でも…ソープに行くのも時間の問題かもねぇ。こういう商売は、慣れちゃったら、どんどんエスカレートしていくものだから…その方が、借金も早く返せるしね」
ふふっ。
女は、嬉しそうに笑った。
あの女が墜ちていく姿でも想像したのだろうか。
カイトの思いは、それとは反比例だというのに。
奥歯を、ギッと噛む。
眉がつり上がっているのを、自分でも気づけないまま。
「いくらだ?」
作って進められる水割りに手もつけず、カイトは早口で聞いた。
「さぁ? 1千万だか2千万だか忘れちゃった……家とか全部売っても、それくらい残ってるんじゃなかったかしら?」
若い女の子一人が背負うには、大きな金額よね。
カイトにしなだれかかろうとする身体を手で止めた。
そのまま立ち上がる。
「ちょ、ちょっと!」
まさか、彼が歩き去ろうとするなんて思ってもいなかったらしい。
慌てて呼び止める女に向かって、カイトは怒鳴った。
「………い!」
それを聞くと、女はひどく驚いた顔をした。
しかし、カイトは彼女の反応を待つこともなく、自分のボックスに戻り始めたのだった。